こころと身体に自然の力〜肝の養生で春を元気に!〜

四月、日ごとに暖かくなり、草木は花を咲かせ色鮮やかに景色を染めています。
春は始まりの季節にあたり、この時期に身体を整えることは一年を元気に過ごすためにも大切なことです。

春と深い関わりのある「肝」の養生をポイントに、心身ともに健やかな身体づくりを心がけましょう。

先月自律神経について触れましたところ、「自律神経ってなに?」と聞かれました。
「自律」という言葉は、自分をコントロールするという意味です。
つまり「自律神経」とは、まばたきや心臓の拍動、睡眠、ホルモンや消化酵素の分泌など、意識によらず自分の身体を勝手にコントロールしている神経をいいます。

自律神経は、日照時間の延長や気圧、温度の変化などの影響により、働きを思うようにコントロールできなくなることがあります。
これにより、動悸や不眠、のぼせ、食欲不振などの症状が現れやすくなります。
春は自律神経が失調しやすい季節なのです。

この症状を改善するためには、無理にでも大笑いしたり、大泣きすることで、感情を解き放ち、ゆったりした気持ちになって、幸せ感を味わうことです。
特に、笑いには自律神経の緊張緩和作用があります。
一怒一老、一笑一若という言葉がありますが、この春よく笑った方は、きっと全身が若返っていることでしょう。

今月の漢方教室

肝の養生で春を元気に!

東洋医学では、春は自然界のすべてのものが伸びやかに成長し、新陳代謝が活発になる季節です。
人間の身体も同様に新陳代謝が活発になり、冬にたまった老廃物を発散していきます。
少し汗をかきやすくなったり、気持ちが浮きだったりします。
こうした身体の活動と深い関わりがあるのは五臓でいう「肝」です。

東洋医学でいう肝は、西洋医学でいう肝臓の働きだけでなく、自律神経系や新陳代謝の機能を担い、全身の「気(エネルギー)」の流れをコントロールし、精神を安定させたり、内蔵の働きをスムーズに保ったりする役割をしています。

また、肝は血を貯蔵し、必要に応じて供給するという血の調整機能も担っています。
肝は春にあたる臓器で、春の草木のように「のびのびとしている状態」を好むことが特徴です。
そのため、ストレスがたまると肝の機能が低下し、消化器系の不調や疲労感、イライラ、憂鬱といったさまざまな不調が現れるようになります。

季節の変わり目で生活環境が変わることも多い春は、ストレスや不安を感じやすい時期です。ストレスを上手にコントロールして肝の機能を健やかに保ち、心も身体も元気に気持ちよく過ごしましょう。

症状でチェック!肝の養生法

春は肝に負担がかかりやすい季節。肝は気と血の調和によって働きが保たれています。

◎気の停滞・・・・・肝気鬱結タイプ

東洋医学では「肝は疎泄(そせつ)を司る」臓器と考えられています。疎泄とは、主に新陳代謝のような機能のこと。
全身の気の流れをスムーズにすることで、精神を安定させたり、胃腸の働きを助けたり、血流を調節したり、といった働きを担っています。

【主な症状】
憂鬱、イライラ、情緒の不安定、頭痛、食欲不振、お腹の張りや痛み、胃もたれ、下痢・便秘など胃腸の不調、胃痛、胸痛、肩こりなどの血行不良、生理痛、生理不順など婦人科の諸症状

【食の養生】
苦味や酸味、香りのある食材を。
みょうが・せり・たらの芽・ふき・ごぼう・そば・クレソン・菊花・ミント・ジャスミン茶など

【漢方薬】
逍遥散・四逆散・小紫胡湯・香蘇散・大紫胡湯・加味逍遥散・感応丸
趣味や軽いスポーツなどで日頃からストレスを上手に発散して、気の流れをスムーズに保ち、肝を健やかに整えるよう心がけましょう。

◎血の不足・・・・・血虚タイプで痺れ(しびれ)や痙攣(けいれん)が気になる方

東洋医学でいう「筋」は筋肉と骨についている腱、筋膜、靭帯など間接をサポートする器官のこと。
肝は血液循環によって、筋に栄養を送りその機能を保ち、関節の運動を助けています。

【主な症状】
足腰が動きにくい、手足のしびれ、けいれん、ふるえ、筋肉がピクピクする、爪が薄くなる/割れやすくなる

【食の養生】
肝を補い、潤いを与える食材を。
あさり・はまぐり・しじみ・あわびなど貝類・グリーンピースなど

【漢方薬】
四物湯・芍薬甘草湯・十全大補湯・婦宝当帰膠・ビイレバーキング・活性型オイスター


◎血の不足・・・・・血虚タイプでめまいや月経不順が気になる方

肝は血の貯蔵庫と考えられていて、活動している時には必要に応じて血を送り出し、睡眠時には肝に集めて蓄えるという働きをしています。

【主な症状】
めまい、顔色が白い、月経不順、月経痛、不正出血鼻血、鼻血やあざなどの出血傾向

【食の養生】
血を補う食材を中心に。
レバー・枸杞の実・なつめ・ごま・ひじき・わかめ・海苔・黒砂糖

【漢方薬】
帰脾湯・加味帰脾湯・七物降下湯・十全大補湯・婦宝当帰膠・ビイレバーキング

◎血の不足・・・・・血虚タイプでドライアイや目のかすみが気になる方

東洋医学では肝は目につながるといわれ、目は五臓の中でも肝と深いつながりがあると考えます。
肝血が十分に蓄えられていれば、必要な栄養や潤いがいきわたり、目も良く見えるというわけです。

【主な症状】
ドライアイ、視力の低下、目の充血、目のかすみ、目の痛み

【食の養生】
肝と目にいい食材を積極的に摂りましょう。
うなぎ・レバー・人参・菊花・枸杞の実・あわび・ブルーベリー

【漢方薬】
杞菊地黄丸・アイリタン・ポリグロン

春の陽気を楽しんで、ストレスを発散

暖かくなり心身の活動が盛んになると、それに伴って感情の起伏も大きくなります。
また春は生活環境の変化も多く、ちょっとしたストレスで精神が不安定になることも。
せっかく気持ちのいい陽気ですから、早起きをして散歩を楽しむなどストレスをためない習慣を心がけ、心も身体もすっきり気持ちよく過ごしましょう。

暮らしの養生


  • 早起きを心がけ、散歩するなどの軽い運動で春の陽気を楽しみましょう。
  • 頭部のブラッシングやマッサージを。気分もリフレッシュできます。
  • 香りのいいお茶(ジャスミンティーやミントティー、菊花茶など)でストレスの発散を。

眼をいたわりたい方へおススメ食材

肝臓が疲れると眼の充血や痛み、頭痛などの症状が現れます。肝臓によい食物が眼にも良いのです。
保存して1年中使えるもの(乾燥・冷凍・ジャム)などもありますので、工夫してみましょう。
ホタテ貝(乾燥)・枸杞の実・ナツメ(乾燥・ジャム)・ごま(乾燥)・菊花茶(乾燥)・ほうれん草・うなぎ・どじょう(冷凍)・竹の子(水煮)などがあげられます。鯉やアワビの胆なども眼に良い食材です。


医食同源の大原則は五味のバランスをとって材料の物質を生かした有効的な方法で、おいしく楽しく食べること。
健康で長生きするための食べ方です。

鯉の胆入り「アイリタン」おススメです。

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